今月の23日から、日本であるアニメ映画が公開となる。題名は『整形水』。日本ではLINEマンガで公開されているウェブトゥーン『奇々怪々』を原作とする本作は、昨年9月に韓国で全国276館で公開され、コロナ禍にも関わらず動員数10万を超えるヒットとなっている。また、同じくウェブトゥーンを原作とするNetflixオリジナルドラマ『Sweet Home〜俺と世界の絶望〜』は公開後、韓国本国のみならずタイ・フィリピン・台湾・シンガポール・ベトナムなどで注目される作品となった。
ゲームや映画と並び、韓国が力を入れているエンターテイメントがウェブトゥーンだ。文化体育観光部とコンテンツ振興院が行った調査によると、2019年のウェブトゥーンの市場規模は約6,400億ウォン(604億円)となっており、前年比37.3%の伸びを記録している。また、2020年上半期においては、60.5%の企業が国内売上、71.9%の企業が海外売上高が増加したと回答している。韓国政府もウェブトゥーンの展開には積極的で、コンテンツ振興院の関連機関、韓国マンガ映像振興院は大韓貿易投資振興公社とともに2020年11月にはWorld Webtoon Forumを主催、ウェブトゥーンの輸出のためのサポートを行っている。また、2021年3月に文化体育観光部・コンテンツ振興院・国際文化交流振興院によって行われたオンランイベント「KOREA-UAE FESTIVAL」では、「K-コンテンツ」の一つとしてウェブトゥーンを取り上げるなどしている。
ウェブトゥーンの海外展開には上記のような政府および関連機関のサポートに加え、プラットフォームの激しい争いがある。中でも大手二社、NaverとKakaoの競争はし烈だ。今年1月、Naverは北米向けウェブトゥーン情報サイト「Webtoon Studios」を開設、人気作品のあらすじやアニメ化の情報などを随時UPしてあらたなファン層の拡大を目指している。また、同月にはカナダのウェブ小説プラットフォーム、Wattpadを6532億5千万ウォン (約615億円)で買収した。ウェブトゥーンは既存の1週間~数か月に一度刊行されるコミックやマンガと異なり、1週間に2・3話が配信されることも珍しくない。いきおいコンテンツの消費サイクルは非常に速くなり、より多くの原作が求められる中で、ウェブ小説プラットフォームにその活路を見出そうとしているのかもしれない。一方のKakaoの動きも活発だ。2020年には香港に子会社Hong Kong TXKP Limitedを設立し、中国市場進出への足掛かりを着々と築いている。また、Naverと同じように北米進出にも抜かりがない。5月にはロサンゼルスを拠点とするウェブトゥーンポータルサイトtapasを買収合併した。tapasは計6万以上のクリエイターを擁するファンタジー・ロマンス系のコンテンツをメインとするサイトで、その主なターゲットは18歳~24歳の女性となっている。また翌6月、Kakaoは新プラットフォームKakao Webtoonを東南アジア各国でリリース、瞬く間に人気アプリとなり、当然のようにダウンロードランキングの一位を獲得している。
ウェブトゥーン界の覇権をめぐる二社の直接対決の舞台となっているのが韓国の老舗ウェブ小説サイトMunpiaだ。2012年にサービスを開始したMunpiaは、その企業価値は約3000億ウォンともいわれており、Naver、Kakao両社にとってウェブトゥーンビジネスのステークホルダーになっている。2021年5月にはNaverがMunpiaの最大株主S2Lパートナーズとの交渉の最終局面に入ったという報道がされた。この買収には韓国の大手エンターテイメント企業CJグループも関わっている。2020年にCJは単独での買収を試みたものの失敗、Naverとのパートナーシップ構築によって再度の挑戦、というわけである。ただ、現時点で買収完了の発表はされておらず、今後の状況によっては新たな展開があるかもしれない。
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