• Takumi Furusato

アフリカの経済大国に根付くアニメカルチャー:ナイジェリアのアニメイベント代表者に聞く

その人口は2億人に達する勢いで増え続けており、GDPもアフリカ大陸でトップを突き進む国、ナイジェリア。10月6日に世界銀行が出したレポートによると、2021年のサブサハラ・アフリカの経済成長率は3.3%、ナイジェリアはすでに4300億ドルあまりのGDPながら、2.4%の成長率を達成している。2100年ごろまでは人口ボーナスが持続し、2090年ごろには7億人に達すると見込まれるこの国は、音楽や映画、ドラマなどのエンターテイメントコンテンツの世界有数の消費地でもある。そして、ここにも日本のアニメに熱狂するファンがいるのだ。


ラゴスの街並み、弊社佐藤撮影


現在のナイジェリアのアニメファンの原体験として、90年初頭に地元テレビ局で放送されていたロボットアニメを挙げるものも多い。その中でもNTA 2 Channel 5で放映された、『百獣王ゴライオン』と『機甲艦隊ダイラガーXV』をアメリカで編集した『Voltron: Defender of the Universe』や『ゲッターロボG』はテレビの前の子供たちの心をつかんだ。同国最大のインターネットフォーラム「Nairaland forum」ではいまだに当時を懐かしむファンがこれらのタイトルに関して投稿を行っているほどだ。2000年代の初めにはTV Africaが『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の英語ふき替え版『Samurai X』を週5日で放送、これがナイジェリア人のアニメファンコミュニティ設立のきっかけとなった。また、『ワンピース』『ブリーチ』『Naruto』といった、日本国外でも人気の高い作品が見られだしたのもこのころからのようだ。アニメコミュニティの盛り上がりにより、「Anime Party」と呼ばれる個人単位の小規模オフラインイベントが開催されるようになり、2019年には中北部の都市カドゥナでアニメコンベンション「Anime Con」が開催された。そして、2022年1月、コロナの影響により1日のみのイベントとはなったものの、ラゴスの中心部ビクトリア・アイランドにて「Eko Anime Fest」が開催される運びとなっている。


https://ekoanimefest.wordpress.com/



「きっかけは2020年のことでした」とEko Anime Fest にかかわるRaheem Damilare氏は語る。「その時、女友達との間で、ラゴスにアニメイベントがないことが話題になったのです。それならば、自分たちで立ち上げてみようと。今回が初めてのイベントとなるのですが、大体500~700人くらいの参加者を見込んでいます」


Eko Anime Festの予定会場、CCX Lagos

https://www.instagram.com/p/CU-jZmeDeRf/



オフラインイベントの開催には、当然ながら費用が必要だ。今回イベントが開催されるCCX Loungeは広さはそこまででもないが、市内の中心部にある洗練されたラウンジ兼レストランで、これを一日とは言え借り切るのはある程度のお金がかかる。だが、それを集めるのは至難の業だったようだ。「スポンサーを探すのはやはり大変でした。非常に努力したのですが、そこにお金を出そうという企業を見るけるのはとても難しかったですね。」とDamilare氏は語る。実際、アニメやその関連商品にお金を投ずるオタク層はまだそう多くなく、イベントのスポンサーシップを引き受ける企業としてはその利点を見出すのが難しいのだろう。そこで、Eko Animeのスタッフは自らがスポンサーとなることにした。今回のスポンサー企業となっているOtaku MartはDamilare氏がオーナーを務める企業だ。ナイジェリアのアニメファンにグッズを届けることを使命とするこのショップでは、フィギュアやアクセサリー、バッグなどのアニメ関連商品を購入することができる。『ドラゴンボール』『東京喰種』『進撃の巨人』『東京リベンジャーズ』など新旧様々なタイトルの商品が並ぶが、ナイジェリアで最も人気のタイトルは『NARUTO』で、アニメファン以外にもその名前は知られているようだ。なお、Otaku Martはオンラインだけでなく、ラゴス市内に実店舗を構えているとのことで、今後ナイジェリアのアニメファンにとって重要な場所になっていくかもしれない。


https://www.otakumart.org.ng/


目下のところ、ナイジェリアのアニメファンが頭を悩ますのはその視聴環境だ。Crunchyrollはサービスを行っているが、FunimationやHuluといった他のプラットフォームは現地での展開をまだ行ってはいない。加えてナイジェリア独特の問題もある。2017年にとあるアニメファンがNairaland forumに投稿した文書によると、政府がドルの使用を制限している一方、現地通貨ナイラ立てのカードが国際間取引に使えず、ストリーミングサービスのプレミアム会員になれない、という点がボトルネックになっているようだ。劇場版を視聴するのはさらにハードルが高くなり、Damilare氏によると「公開から何か月も待たなくてはならない」という。原作マンガを読もうと思っても、上記の理由から正規のサービスを利用できず、mangazone やTachiyomiといったアプリを使ってインフォーマルな形で読む、ということしかできないのが現状である。


2010年代に入って、日本企業がアニメをナイジェリア市場に持ち込もうとする試みが散見されるようになってきた。手塚プロダクションは2014年、TV局CHANEL TVと協力して「ロボット・アトム」を製作、現地の子供向けコンテンツへの第一歩を踏み出している。一方で、第三国経由でもたらされたアニメに熱狂し、日本企業が直接アプローチをする前からコミュニティを形成していたアニメファンが存在していたというのは注目すべき事実だ。その活動の一つの到達点となるEko Anime Festが果たしてどのような結果となるのか、大げさに言えば、今後のナイジェリア、ひいてはサブサハラアフリカのアニメ市場を占うものになるかもしれない。



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